猫が胃腸炎のときに絶対NGなこと3選【獣医師がやさしく解説】

猫が胃腸炎のときに絶対NGなこと3選【獣医師がやさしく解説】

猫の胃腸炎は季節の変わり目や食事の変化、ストレスなどで起こりやすく、吐き気や下痢が主なサインです。自己判断で「水を一気に飲ませる」「欲しがるだけごはんを与える」「記録を残さない」といった対応は症状を悪化させるNG行動。正しくは水分を少しずつ与え、食事は消化にやさしいものを少量ずつ。症状や排泄を記録し、異変があれば早めに受診を。日々の観察と予防で愛猫を守りましょう。

季節の変わり目は要注意

最近、吐く・下痢をする猫が
増えてきたと感じませんか?

実はその背景には、
寒暖差などの“季節ストレス”が
大きく関係している場合が
あります。

猫は環境の変化に敏感で、
気温の急な上下や湿度の変化が
お腹の調子に影響することも
少なくありません。

元気に見えても、実は胃腸に
負担がかかっているケースも。
そんなときに間違ったケアを
してしまうと、症状が悪化し、
重い病気に進行してしまうことも
あります。

ここでは猫の胃腸炎のときに
絶対NGな対応を3つ取り上げ、
正しいケアの考え方を
 解説していきます。


こんな症状ありませんか?

胃腸炎を疑うサインには、
次のようなものがあります。

  • 急に吐いた

  • うんちがやわらかい

  • ごはんを食べたがらない

これらの症状が見られても、
猫が元気に動いているなら
1日程度様子を見ることは
許容されます。

しかし、ここで注意したいのが
「自己判断のケア」です。
対応を誤ると回復を妨げたり、
かえって体調を悪化させる
 原因となってしまいます。


NG行動① 水を一気に飲ませる

脱水が心配で、つい「たっぷり
水を飲ませよう」と考えるのは
自然なことです。

ですが、胃腸炎で弱っている
ときに一気に水を飲むと、
胃が刺激されてさらに吐いて
しまうリスクがあります。

水分補給は「少しずつ、回数を
分けて」が基本です。

器を複数の場所に置いたり、
スープやウェットフードを
活用して自然に飲水量を
増やす方法が効果的です。

特に子猫や高齢猫は、脱水が
命に直結する危険があります。
「飲ませる」より「飲みやすい
環境を整える」意識が大切です。

 


 NG行動② ごはんを欲しがるだけ与える

吐いたあとに食欲が戻ると、
つい安心してたくさんごはんを
与えてしまいがちです。

しかし胃腸炎の回復期には
「お腹を休める時間」が必要。
急に大量に食べることで
胃腸に負担をかけ、
再び嘔吐や下痢を引き起こす
危険があります。

半日程度は少量で様子を見る、
または消化の良いフードを少し
ずつ与えるのが基本です。

ただし猫の場合、完全な絶食は
病気のリスクを高めます。
「少しずつ」が大切なポイント
なのです。

療法食やふやかしたフードを
利用するのも有効です。

 


NG行動③ 記録を残さない

「吐いた」「下痢をした」という
情報だけでは、動物病院での
診断に必要な材料が足りません。

  • 何回吐いたか

  • どんな色や内容だったか

  • 便の状態や回数

  • いつから症状が始まったか

これらを写真や動画で記録する
だけでも、診断の精度は大きく
変わります。

特に猫は来院時に緊張して
普段通りの症状が出ないことも
あります。飼い主の記録は
 とても重要な情報源になるのです。


 

胃腸炎の原因を知ろう

胃腸炎にはさまざまな原因が
あります。

  • 急な食事の変更

  • 腐敗した食べ物の誤食

  • ウイルスや細菌感染

  • 異物を飲み込んだとき

  • 強いストレスや寒暖差

季節の変わり目に増える理由は、
気温変化による自律神経の乱れが
胃腸の動きに影響するためです。

「ちょっとした吐き気」でも
背景に複数の要因が絡んでいる
可能性があるため、軽視せず
 観察することが大切です。


家庭でできるサポート方法

NG行動を避けるだけでなく、
正しいサポートを知ることも
重要です。

  • 水は少しずつ、器を複数に

  • 消化の良い食事を小分けに

  • 静かな環境で安静にさせる

  • 室温を一定に保つ

これだけでも回復の助けに
なります。

また、体を温めすぎず冷やしすぎ
ない工夫も必要です。
胃腸の弱い子は冷えが刺激となり
症状を悪化させることがあるため
 注意しましょう。


受診の目安を具体的に

「様子見」と「受診」の境目を
知ることも重要です。

  • 24時間以上食べない

  • 繰り返し吐き続ける

  • 下痢が3日以上続く

  • 血が混じる便や嘔吐がある

  • 子猫や高齢猫で症状が出る

こうした場合は迷わず受診を。

獣医師は触診やエコー、血液検査
などで重症度を見極めます。
早期に治療すれば大事に至らず
 回復できるケースも多いのです。


現場で見たケースから

診察でよくあるのは「元気だから
大丈夫だと思った」という子です。

ある猫は吐いた直後に食欲が戻り
飼い主さんがたっぷりごはんを
与えてしまいました。結果的に
再び激しく吐き、脱水が進んで
入院が必要になった例もあります。

一方、別の飼い主さんは記録を
丁寧に残しており、受診時に症状
の流れを説明できたため、
すぐに適切な治療につながり
短期間で回復しました。

正しい対応の差が、愛猫の負担を
大きく変えることを実感します。

 


胃腸炎NG行動のまとめ

  • ✕ 一気に水を飲ませる

  • ✕ ごはんを欲しがるだけ与える

  • ✕ 記録をとらない

この3つは症状を悪化させる
リスクが高いため、絶対に避けて
ください。

さらに「原因を知る」「正しい
サポートをする」「早めに受診」
この3つを意識すれば、胃腸炎の
多くは軽症で済みます。

愛猫の小さなサインを見逃さず、
正しい知識で守ってあげましょう。

胃腸炎を予防するためにできること

胃腸炎は正しいケアで回復可能
ですが、何より大切なのは
「そもそも発症させないこと」。
日常生活でできる工夫を意識する
ことで、発症リスクを減らすこと
ができます。

まず食事の管理です。
フードを急に切り替えると、
胃腸に負担をかけやすくなり
下痢や嘔吐の原因になります。
新しいごはんに変えるときは
1週間以上かけて少しずつ
混ぜて慣らしましょう。

またフードの保存状態にも注意。
湿気の多い場所や開封後に長期間
放置したものは劣化しやすく、
胃腸炎を引き起こす要因となり
ます。密閉容器を使い、開封後は
できるだけ早めに使い切るのが
安心です。

次に生活環境の工夫です。
急激な寒暖差は猫の体に強い
ストレスを与えます。
エアコンや加湿器を活用し、
室温と湿度を一定に保つことが
予防につながります。

さらにストレスケアも重要です。
来客や引っ越し、多頭飼育などの
環境変化は胃腸に影響を及ぼす
ことがあります。
安心できる隠れ家や高い場所を
用意し、静かな時間を確保して
あげましょう。

そして定期的な健康診断。
年に1回の血液検査や便検査で、
消化器の不調や潜在的な病気を
早期に見つけられることがあり
ます。

日々の観察、環境整備、定期健診。
この3つを意識することで、胃腸炎
はぐっと防ぎやすくなります。
「もしも」に備えるだけでなく、
「そもそも発症させない」ための
暮らしを整えてあげましょう。


まとめ

猫の胃腸炎は、決して珍しい
病気ではありません。
むしろ季節の変わり目や環境の
変化が重なったときに、
多くの猫が経験する体調不良の
ひとつといえるでしょう。

だからこそ飼い主が知っておく
べきなのは「正しい対応」と
「やってはいけない対応」です。
水を一気に飲ませないこと、
ごはんを欲しがるだけ与えない
こと、記録を残さないこと――
この3つのNG行動を避けるだけ
でも、悪化を防ぐ可能性は
大きく高まります。

さらに大切なのは、日々の観察と
小さな変化を記録する習慣です。
元気そうに見えても、吐き方や
便の状態、食欲や水分摂取量には
必ずサインが隠れています。
その変化を捉え、受診の際に
伝えられることは、獣医師にとっ
ても非常に助けになる情報です。

また、飼い主自身が「これは様子
を見てもいい状態なのか、
すぐに病院に行くべきなのか」を
判断する基準を持つことは、
猫の命を守るうえで大きな力に
なります。
24時間以上食べない、繰り返し
吐く、ぐったりしている――
こうしたサインを知っていれば、
迷わず行動できるでしょう。

猫は言葉を話せません。
だからこそ私たち飼い主が、
日常の小さな違和感を拾い上げ、
正しい知識で守ってあげる必要が
あります。

胃腸炎は軽症なら数日で治る
こともありますが、対応を誤れば
命にかかわる重症へ進むことも
あります。
「大丈夫かな?」と不安になった
ときこそ、行動を先送りせず、
すぐに記録を残し、必要に応じて
受診を。

愛猫を守るのは、飼い主である
あなたの判断と行動です。
今日からできる小さな意識が、
未来の大きな安心へつながり
ます。