猫の「スリスリ」に隠された3つの理由【獣医師がやさしく解説】

猫の「スリスリ」に隠された3つの理由【獣医師がやさしく解説】

猫の「スリスリ」は、甘えや愛情表現だけでなく、縄張りを示すマーキングや飼い主を独占したい気持ちの表れでもあります。環境が変わったときや安心したいときにも増える行動で、健康や心理状態のサインになることも。逆にスリスリをあまりしない子もいますが、それは愛情がないのではなく、その子なりの距離感や表現方法があるだけ。仕草の背景を理解することで、愛猫との絆はより深まり、日々の暮らしがもっと愛おしいものになります。

えっ、それもスリスリの理由!?

猫が足元にやってきて、
体をスリスリとこすりつけてくる瞬間。
「嬉しいのかな?」「甘えてる?」と、
思わず笑顔になる仕草ですよね。

多くの飼い主さんは、
この行動を「大好き♥」のサインだと
思っているはず。
もちろん、それは正解のひとつです。

でも実は、猫の“スリスリ”には、
愛情表現以外にも
深い理由が隠されています。

猫はとても繊細で、
感情や状況によって行動を使い分けます。
スリスリもただの甘えではなく、
縄張り意識や独占欲、
環境への適応といった意味を持つことが
あるのです。

この小さな仕草の背景を知ると、
「今この子、何を感じているんだろう?」と
考えるきっかけになります。
そして、その理解が愛猫との距離を
さらに縮めてくれるはずです。

ここでは、猫のスリスリに隠された
3つの理由と、
スリスリ行動のバリエーションについて
詳しくご紹介します。

 


スリスリの理由① 愛情表現「大好きサイン」

やはり一番分かりやすいのは、
「嬉しいよ」「大好きだよ」という
気持ちの表れです。

飼い主が帰宅したとき、
ナデナデや遊びのあと、
一緒にくつろいでいるときなど、
安心感と喜びがあふれた瞬間に
スリスリしてくることがあります。

猫は言葉で感情を伝えられませんが、
この行動には「あなたと一緒にいると
幸せだよ」という
温かいメッセージが込められています。

スリスリを受けたときは、
軽く撫で返してあげると、
さらに安心感が増します。
お互いの信頼を深める、
 素敵な時間になるでしょう。


スリスリの理由② 縄張りマーキング

猫は縄張り意識の強い動物です。
頬や体の一部には
フェロモンを分泌する腺があり、
そこをこすりつけることで
自分の匂いを残します。

壁やソファー、家具の角などに
スリスリしている姿を
見かけたことはありませんか?
あれは「ここは自分の場所」と
アピールしているサインです。

匂いをつけることで、
猫は安心感を得ています。
特に新しい家具を置いたときや、
引っ越し後によく見られる行動です。

飼い主としては家具が傷つくのが
気になることもありますが、
それは猫にとって大切な
心の安定行動だと
 理解してあげることが大切です。


スリスリの理由③ 独占欲

家具や部屋だけではなく、
飼い主である“あなた”にも
スリスリするのはなぜでしょうか。

実はこれ、
「これはボク(わたし)のもの」という
独占欲のあらわれ。
飼い主にも自分の匂いをつけることで、
他の猫や動物に
「この人は私のもの」と
マーキングしているのです。

ちょっとびっくりする理由ですが、
そこには深い愛着が隠れています。
猫にとってあなたは
唯一無二の存在だからこそ、
自分の匂いをしっかり刻みたいのです。

 


たくさんスリスリしてくる猫

スリスリが増えるときは、
安心しているときや
甘えたいときが多いです。

また、環境の変化があったときも、
スリスリの回数が増えることがあります。
引っ越し後や来客のあとなど、
新しい匂いや状況に触れたとき、
自分の匂いを強く残して
安心しようとするのです。

「今日はいつもより甘えてくるな」と
感じたら、
それは猫からの大切なサイン。
しっかり受け止めて、
 安心できる時間を作ってあげましょう。


スリスリしない子もいます

中には、あまりスリスリをしない猫もいます。
性格や育った環境によって、
スキンシップの仕方はさまざまです。

スリスリをしないからといって、
愛情がないわけではありません。
ただ、体をこすりつけるよりも、
そっと近くに座る、
じっと見つめるなど、
別の方法で気持ちを伝えているのです。

飼い主はその子なりの
愛情表現を見つけ、
尊重してあげることが大切です。

スリスリと猫の健康・心理状態

猫のスリスリは、
単なる感情表現だけでなく、
健康や心理状態のサインに
なっていることもあります。

ストレス緩和のサイン

猫は不安や緊張を感じたあとに、
自分の匂いをつけて
安心しようとする習性があります。
そのため、来客や大きな音など、
日常と違う出来事の後に
頻繁にスリスリする場合は、
「少し怖かったよ、でももう安心したよ」
という心の整理の行動と
考えられます。

体調不良との関係

反対に、普段はスリスリしてくるのに
急にしなくなった場合は要注意です。
顔や体をこすりつける動きは、
痛みや不快感があると控えることがあります。
例えば関節の痛みや皮膚炎、
耳や口のトラブルなどです。
いつもと違うスリスリの回数や強さは、
体調の変化を知る手がかりにもなります。

フェロモンと安心感

猫の頬や額にある臭腺から出るフェロモンは、
人間には感じられない香りですが、
猫同士や猫自身にとっては
安心感を与える重要な要素です。
スリスリでフェロモンを残す行動は、
「ここは安全」という
自己暗示の役割も果たしています。
これは特に新しい場所や
引っ越し後に顕著に見られます。

飼い主との関係性チェック

スリスリは、飼い主と猫との信頼関係が
どの程度築かれているかを
知るきっかけにもなります。
距離を縮めたいときや、
甘えたいときに行うことが多いため、
毎日の中でスリスリのタイミングや
シチュエーションを観察することで、
愛猫の心理をより深く理解できます。

 


愛猫にマーキング、大歓迎!

スリスリは、猫が「あなたが好き」と
体で伝えてくれる
温かい愛情表現でもあります。

飼い主としては、
「マーキングされてるんだな」と
理解しつつも、
素直にその気持ちを受け取ってあげましょう。

あなたの猫ちゃんは、
どんなときにスリスリしてきますか?
その瞬間の気持ちを想像してみると、
もっともっと愛おしさが増すはずです。

まとめ

猫のスリスリは、
一見すると単なる甘えの
仕草のように思えますが、
その背景には多様な理由が
隠れています。
「大好き」「嬉しい」という
純粋な愛情表現のほかにも、
縄張りを主張して安心するため、
また飼い主を自分の大切な
存在として独占するためなど、
猫の本能や心情が色濃く
表れた行動なのです。

こうした理由を知ることで、
飼い主はスリスリを
ただ受け止めるだけでなく、
そのとき猫が感じている
感情や状況を想像できるように
なります。
それは愛猫への理解を深め、
信頼関係をより強固に
してくれるでしょう。

スリスリが増える時期には、
環境の変化や来客、
新しい家具の導入などが
関係していることがあります。
猫は匂いを使って
自分の安心できる世界を
作り上げているため、
その匂いが変化すると
再び自分の匂いを
付け直す行動が見られます。
このときは不安や緊張も
感じている可能性があるため、
できるだけ安心できる
空間と時間を用意してあげる
ことが大切です。

一方で、スリスリをあまり
しない猫もいます。
それは愛情がないのではなく、
その子なりの距離感や
スキンシップの方法があるだけ。
そっと隣に座る、
じっと見つめる、
静かに寄り添う――
こうした行動もまた、
猫にとって立派な愛情表現です。
飼い主は猫の個性を理解し、
その子に合った接し方を
見つけていくことが必要です。

猫の仕草には必ず理由があります。
スリスリも、愛情・安心・主張と
いった複数の意味が
絡み合った奥深い行動です。
だからこそ、日々のスリスリを
「今、この子は何を伝えたいのか」
と感じながら受け止めることが、
猫との絆を育む
何よりの近道になります。

次に愛猫があなたにスリスリして
きたときは、その温もりや
柔らかな毛並みの感触とともに、
そこに込められた想いを
感じ取ってみてください。
それは、言葉よりも確かに
あなたを愛している証であり、
安心と信頼のしるしです。
そして、その瞬間を大切に
積み重ねることで、
きっとこれからの暮らしは
もっと温かく、豊かなものに
なっていくでしょう。