抱っこ好きな猫の育成法!  リラックスのコツ 【獣医師がやさしく解説】

抱っこ好きな猫の育成法! リラックスのコツ 【獣医師がやさしく解説】

抱っこが苦手な猫も、正しいステップと丁寧なスキンシップで少しずつ慣らすことができます。焦らず猫の気持ちを尊重しながら信頼関係を築けば、抱っこは安心できる時間に。抱っこは災害時や通院時にも役立ち、健康チェックにもつながります。

はじめに

「抱っこはできるけど
すぐに逃げてしまう…」

「もっと長く抱っこしていたいのに」
「病院や爪切りのとき、
落ち着いていてくれたらいいのに…」

そんな風に思ったことは
ありませんか?

猫との暮らしの中で、
“抱っこ”はとても大切な
コミュニケーションのひとつ。

けれど、実際には
抱っこが苦手な猫も多く、
「全然落ち着いてくれない」
「手を離したらすぐ飛び降りる」
と悩む方も多いはずです。

猫は本来、
自由を好み、身体を拘束されるのが苦手な動物。

抱っこされることに対して
本能的に警戒心を持つのは、
決して珍しいことではありません。

特に、保護猫や野良出身の猫は、
過去の経験から体を触られることに
恐怖を感じている場合もあり、
時間をかけて慣らす必要があります。

でも実は、抱っこは
“やり方”や“気持ちの伝え方”を
工夫することで、
猫にとっても心地よい時間に
変えていくことができるんです。

猫が「抱っこ=楽しい」「安心できる」と
感じられるようになることで、
スキンシップがもっと自然に、
お互いにとって快適なものになります。

このコラムでは、
抱っこが苦手な猫にも使える
段階的なトレーニング方法、
リラックスのさせ方、
猫の好みに合わせた
抱っこのスタイルなどを
獣医師の視点から
わかりやすく解説します。

猫の気持ちを最優先にしながら、
少しずつ「抱っこ好き」を育てていく
ヒントをお伝えします。

 


step*1 抱っこ時間を伸ばすトレーニング

抱っこに慣れてもらうには、
無理をさせず、段階的に
時間を伸ばしていくことが大切です。

いきなり長時間抱っこしようとすると、
猫は驚いて「イヤな体験」として
覚えてしまうかもしれません。

【ステップ①:最初は数秒から】

最初は2〜3秒抱っこして、
すぐに下ろすことから始めます。

このとき、
下ろした後に

ごほうびのおやつを与えると、
猫は「抱っこ=良いことがある」
と学習しやすくなります。

【ステップ②:徐々に時間を延ばす】

数日~1週間ごとに
抱っこの時間を少しずつ延ばし、

・5秒

・10秒

・15秒

と段階的に慣らしていきましょう。

【ステップ③:抱っこのあとは遊び時間】

抱っこのあとには
猫の好きなおもちゃで遊ぶ、
なでなでしてあげるなど、
“楽しい時間”をセットにすると、
猫は「抱っこのあとはいいことがある」と
記憶してくれるようになります。

“嫌なことが起きない”を積み重ねることが
信頼の第一歩です。

 


step*2 抱っこでリラックスさせる

「抱っこされても
すぐに落ち着かない」

そんな猫には、
リラックスさせるための
抱っこの工夫が効果的です。

まず、抱っこのときには、

・急な動きはしない

・声をかけるときも静かに

・大きな音を避ける

この3つを意識するだけでも
猫の安心感はぐっと高まります。

【首元や顎下をやさしく】

猫が心を開きやすいポイントは、
首の付け根や顎の下、
喉元まわり。

ここをゆっくりなでることで、
ゴロゴロと喉を鳴らすようになったら、
リラックスの合図です。

【ゆらゆら揺らすと安心感UP】

軽く体を揺らすように抱くと、
子猫の頃に母猫に運ばれたときの記憶が
呼び起こされるのか、
安心して身を預けてくれる子もいます。

ただし、
猫が嫌がる様子を見せたら
すぐにやめてあげることが大前提。

リラックス=無理をしない、が基本です。

 


前足肩乗り抱っこ

猫を抱っこするときに、
前足を飼い主の肩に乗せるスタイルが
意外と好評な子も多いです。

【ポイント】

・後ろ足をしっかり支える

・壁や棚の近くで

 乗り降りしやすくする

このスタイルは、
猫の目線が人と同じ高さになり、
周囲がよく見渡せるため安心感が増します。

「抱っこされている」感よりも、

「高い場所にいる」感覚になり、

嫌がりにくいという特徴があります。

肩に乗った猫と目が合うと、
思わず笑顔になってしまう瞬間も。

このスタイルが好きな子には、
移動時にも使える実用的な抱っこ法です。

 


スリング抱っこ

スリング(布製の抱っこバッグ)を
使った抱っこもおすすめです。

【メリット】

・身体に密着して安心感がある

・飼い主の動きが安定する

・腕の負担が少なくなる

猫は“包まれる感覚”に安心する子が多いため、
ふわっと体が包まれるスリングは
リラックスしやすいスタイルのひとつです。

【スリングに慣れるコツ】

最初はスリングの中で
おやつを食べさせる、
においのついたタオルを敷くなどして
安心できる場所として覚えてもらいましょう。

スリングのまま動き回るのではなく、
最初は静かな場所でスリング抱っこを体験し、
徐々に慣らしていくのがポイントです。

 


仰向け抱っこ

“赤ちゃん抱っこ”とも呼ばれる
仰向けスタイルは、
信頼関係が深まった猫となら
チャレンジする価値があります。

【やり方】

・後ろ足を優しく持ち、

 お腹を支えるように抱く

・背中は飼い主の腕でしっかり支える

・お腹を軽くなでて安心させる

このスタイルは、
猫が一番無防備になる体勢のため、
最初は短時間からスタート。

嫌がるそぶりがあれば、
無理に続けずすぐにやめましょう。

少しずつ慣れてくると、
目を閉じてリラックスしてくれる子もいます。

ただし、すべての猫に向くわけではないため、
無理に仰向けにするのはNG。

猫の反応を見ながら、
“この子はどんなスタイルが落ち着くか”を
見つけてあげましょう。

 


特別編:抱っこ克服トレーニング

最後に、もともと抱っこが苦手な子に
少しずつ慣れてもらう方法をご紹介します。

【ご飯前に短時間抱っこ】

食事前はごきげんで、
猫の警戒心が下がりやすい時間帯。

このタイミングで数秒だけ抱っこして、
すぐ下ろすを習慣にしていくと、
徐々に抵抗が減っていきます。

【遊びとのセット化】

猫が大好きなおもちゃで遊ぶ前に
数秒の抱っこを挟むことで、
抱っこ=楽しい時間の始まり
というイメージづけができます。

【日常的なスキンシップを増やす】

普段から声をかけながら触れる、
ブラッシングをする、
お腹や背中をなでるなど、
“触られること”に慣れてもらう時間を
日々の中で増やしていきましょう。

無理強いせず、猫のペースに寄り添うこと。
それが一番の近道です。


 


 

まとめ

抱っこは、
猫との信頼関係が
あってこそ楽しめる スキンシップです。

最初は短時間から 始めて、
「抱っこ=安心」
と感じてもらえるように、
丁寧に関係を 築いていきましょう。

すべての猫が
抱っこを好むわけでは ありません。

そもそも触られることを
苦手とする子も多く、
それもまたその子 ならではの個性です。

大切なのは、
その子のペースに 寄り添いながら、
無理なく進めていくこと。

少しずつ距離を縮める 姿勢が、
長い目で見て
強い信頼関係を 育む鍵になります。

実際に、
何年も 抱っこを拒んでいた猫が、
ある日突然飼い主の膝に 自ら乗ってきた、
というような感動的な
エピソードも 多く報告されています。

猫の気持ちを 最優先にしながら、
その日が訪れるのを 楽しみに待つのも、
素敵な付き合い方です。

そして、
抱っこが できるようになると、
通院や健康チェック、
災害時の移動、
避難や保定といった
“いざという時”に
大きな力を発揮します。

慣れていない猫を
無理にキャリーに
入れるのは難しいですが、
抱っこができれば、
素早く安全に 移動することが可能です。

また、スキンシップの中で、
体の異変に気づく こともあります。

皮膚の異常、体重の変化、
しこりや痛がる箇所など、
普段から触れておくことで、
異常の早期発見に つながります。

さらに、
触れ合うことで、
飼い主自身も癒され、
精神的な満足感や 絆の深まりを
感じることが できるでしょう。

日々の抱っこを通じて、
猫との心の距離が縮まり、
お互いにとってかけがえのない存在
になっていきます。

猫の幸せと健康を守るため、
そしてより豊かな 暮らしのために、
今日から少しずつ、
抱っこタイムを はじめてみてくださいね。