猫は甘みを感じないって本当?【獣医師がやさしく解説】

猫は甘みを感じないって本当?【獣医師がやさしく解説】

猫は甘みを感じる遺伝子を持っておらず、ケーキやいちごの「甘さ」を美味しいとは思っていません。興味を示すのは脂肪や香りによるもの。人間用のスイーツは中毒を引き起こす可能性があり、絶対に与えてはいけません。猫には香りやうま味、食感を重視した専用のおやつを選びましょう。可愛いおねだりに負けず、安全で健康的なおやつの選び方を知ることが、愛猫との楽しい暮らしに繋がります。

甘いスイーツが大好きな方にとって、
猫との暮らしは時にちょっとした葛藤が
あるかもしれません。

「ケーキを食べていたら、じっと見てくる」
「いちごに興味津々で寄ってくる」
「ドーナツの箱を開けたらクンクンしてきた」
――そんな経験、ありませんか?

つい「ちょっとだけなら」と
お裾分けしてしまいそうになりますが、
ここでぜひ知っておいていただきたいのが、
猫の“味覚”の秘密です。

実は猫には「甘さ」を感じる能力が
まったく備わっていないのです!

そう、私たちが「甘くて美味しい!」と
感じるスイーツも、猫にとっては
ただの“匂いのするもの”“脂肪っぽいもの”に
すぎないかもしれないのです。

そして、もっと重要なのは――
人間用の甘い食べ物の中には、
猫の体にとって非常に危険な成分が
含まれていることもある、という点です。

今回は、「猫は甘党じゃない」という
ちょっと意外な真実を科学的に紐解きながら、
猫にとって本当に嬉しい“おやつ選び”について
獣医師の視点からお話していきます。

「可愛いから、喜びそうだから」と思って
あげていたおやつが、実は体に悪かった…
そんなことにならないように、
 ぜひ今日からのフード選びに役立ててください。


猫が甘さを感じない理由

猫は「甘味」を感じるために必要な
“甘味受容体(T1R2)”という遺伝子を
持っていません。

この受容体は、本来は糖分やはちみつ、
フルーツなどに含まれる“甘さ”を脳に伝える
役割を持っていますが、猫には
この機能が完全に欠損しているのです。

そのため、どれだけ砂糖を使っていようが、
蜂蜜たっぷりのスイーツであろうが、
猫の舌には「何も感じない」状態。

たとえば、人が「うまっ♥」と感じるケーキも、
猫にとっては“無味の塊”でしかない
可能性が高いのです。

これは、猫が本来肉食動物であり、
糖質にあまり関心がなかったことが
 進化の過程に反映されていると考えられています。


じゃあなんで食べたがるの?

「でもうちの猫、生クリーム舐めたがるよ!」
「ドーナツに飛びついてきたけど?」
そんな飼い主さんの声も多く聞きます。

実はこれ、「甘さ」に反応しているのではなく、
脂肪分や動物性の香り
惹かれているのです。

猫の嗅覚は非常に優れており、
脂肪の香りや、ミルクの匂いには
敏感に反応します。

生クリームには乳脂肪が多く含まれ、
それが“美味しそう”に感じられているだけ。

つまり、「甘いから好きなんだろう」と
思っていたのは、完全に人間目線の勘違い。

猫にとっては、匂い・脂肪・食感こそが
 食べ物を選ぶ重要な要素になっているのです。


猫の味覚の特徴

猫の味覚は、私たち人間とは
かなり異なる点が多いです。

以下は猫が感じやすい味・感じにくい味の一覧です:

  • 甘味 → × 感じない

  • 苦味 → ◎ とても敏感

  • 塩味・酸味 → △ そこそこ感じる

  • うま味 → ◎ 大好物!

とくに苦味への感度が高く、
これは「自然界で毒を避ける」ために
発達したと言われています。

一方で、うま味には非常に敏感。
肉や魚に含まれるアミノ酸に
強く惹かれる傾向があります。

そのため、かつお節や煮干しなどの香りに
 反応しやすいのは自然なことです。


じゃあ甘いおやつは無意味?

「いちご味の猫おやつ」や
「スイーツ風おもちゃ」など、
“甘さ”をテーマにした猫グッズは
たくさん見かけますよね。

これらは見た目やネーミングが可愛いだけで、
実際の“味”とは関係ありません。

猫は甘みを感じないため、
「いちご味」と書かれていても、
その“風味”や“香り成分”が
猫にとって魅力的かどうかで
食いつきが変わります。

つまり、猫が喜ぶのは甘さではなく、
匂いや食感なんです。

甘い味の擬人化ではなく、猫目線での
 喜びポイントを見極めることが大切です。


おやつ選びのポイント

猫のおやつを選ぶときのコツは、
「人間の好みに合わせないこと」です。

猫が喜ぶ要素としては、以下の3つが挙げられます:

  • 香りが強め(肉・魚系)

  • うま味がたっぷり(アミノ酸豊富)

  • パリッ、トロッなど食感が楽しい

とくにドライ系おやつは歯ごたえがあり、
猫の狩猟本能をくすぐるアイテム。
一方で、チュールのような液状おやつも、
香りやうま味が凝縮されていて人気です。

また、おやつは「特別なご褒美」として
 量を控えめに与えることも大切です。


絶対NGな人間の甘いもの

「猫も一緒におやつタイムを…」という気持ちで
人間用スイーツをあげるのはNGです!

以下のような食品は特に危険です:

  • チョコレート(テオブロミン中毒)

  • キシリトール(血糖値低下→肝障害)

  • ぶどう・レーズン(腎障害)

  • 生クリーム・乳製品(消化不良)

  • ドーナツやケーキ(高脂肪+糖分)

中毒症状としては、嘔吐、下痢、震え、
けいれん、昏睡など重篤な状態になることも。
少量でも影響が出る場合があるため、
絶対に与えないようにしましょう。

よくある誤解と猫の“おねだり行動”の真実

飼い主さんからよくある質問のひとつに、
「甘いものに興味津々なんだけど、
やっぱり甘さを感じてるのでは?」
という声があります。

結論から言うと、それでも猫は
甘さそのものは感じていません
しかし、それ以外の要素――
たとえば脂肪の香り、ミルクの成分、
食感のやわらかさなどには、
しっかりと反応しています。

たとえばドーナツの袋を開けた瞬間、
バターや卵、乳製品の香りが広がります。
猫にとっては「うま味や脂肪の匂い」として
非常に魅力的に感じられるため、
近寄ってきたり、舐めようとする行動が
見られるのです。

また、人が何かを食べているときに
じっと見つめてくる、
「それちょうだい」と言わんばかりの
おねだり行動をすることもありますよね。

これは、「人が口にしているもの=美味しい」
という経験の積み重ねによって
学習している場合もあります。
つまり「中身が何か」ではなく、
“飼い主が喜んで食べている=きっといいもの”
という認識なのです。

ここで甘やかしてしまうと、
「もらえるまで粘ればもらえる」と覚えてしまい、
よりしつこく要求するようになります。

可愛いおねだりに負けず、
猫には猫のために作られた
おやつを選ぶことが大切です。

中には“スイーツ風”に見えるけれど、
実際にはうま味成分だけで作られている
猫用おやつもあります。
「見た目は人用、中身は猫用」――
そんな工夫のある製品を活用するのも
ひとつの手段です。

ご褒美としてのおやつ、どう使う?

おやつは猫にとっての“楽しみ”であり、
飼い主さんとのコミュニケーションを
深めるツールでもあります。

特に、爪切りや通院、投薬など
猫が少し苦手なことに対して、
「がんばったね」の気持ちを込めて
おやつを与えるのはとても有効です。

ただし、与える量やタイミングには注意が必要。
与えすぎればカロリーオーバーになり、
肥満や病気のリスクも高まります。

また、おやつを食べすぎて
主食を残すようになってしまっては本末転倒。

「1日の食事の10%以下」を目安に、
主食とのバランスを考えながら
ご褒美として上手に活用していきましょう。

“ごほうび”が“健康を損なうきっかけ”に
ならないように――。
甘さではなく、やさしさと工夫で、
 猫の健やかな毎日をサポートしてください。


まとめ

猫は「甘党」ではありません。
むしろ、甘さを全く感じない動物です。

スイーツや果物に興味を示すことがあっても、
それは“香り”や“脂肪”に惹かれているだけ。

人間用の甘い食べ物は、
猫にとっては毒になることもあるため、
どんなに欲しがっても絶対にNGです。

猫のおやつ選びでは、
「香りとうま味」「楽しい食感」に注目して
安全で美味しいものを選んであげましょう。

甘い顔をしていても、
中身は完全なる“肉食グルメ”。
それが猫という生き物なのです。