猫がつらい時に  見せる行動5選 【獣医師がやさしく解説】

猫がつらい時に 見せる行動5選 【獣医師がやさしく解説】

猫は体調が悪くても平気なフリをする動物です。だからこそ、毛繕いをしない、目に力がない、暗い場所にこもる、鳴き方が変わる、呼吸が浅くなるなどの小さな変化に気づくことが大切です。日々の観察は健康管理だけでなく、猫との信頼関係を深める時間にもなります。「なんか違うかも」と感じたら、その直感を大切に。小さなサインを見逃さず、穏やかに暮らす猫の命をそっと支えてあげましょう。

猫はとても我慢強い生き物です。

体調が悪かったり、どこかが痛かったりしても、
人のように「つらい」と表情や声に出すことは
ほとんどありません。
それどころか、平気なフリをして
じっと黙って過ごすことが多いのです。

これは、猫が本来“弱っている姿を見せない”
野生の本能を持っているため。
敵に弱点を見せないために、
本能的に不調を隠そうとするのです。

でも、飼い主さんにとってはそれが大きな壁。
「大丈夫そうに見えたのに、急に具合が悪くなった」
「元気だと思っていたのに、病院で重症とわかった」
そんなケースは決して少なくありません。

だからこそ、猫が見せる
“さりげない不調のサイン”に
いち早く気づいてあげることが、
命を守るカギになるのです。

今回は、猫がつらいときに見せる
代表的な行動5つをご紹介します。

何気ない行動に見えても、
それは体や心からのSOSかもしれません。

「なんか今日はちょっと違うな」
そんな小さな気づきを大切にして、
 愛猫との暮らしを守っていきましょう。


サイン① 毛繕いをしなくなる

猫といえば、毛繕いの名人。
暇さえあれば、ぺろぺろと体を舐めて
毛並みを整える姿をよく見かけますよね。

でも、もし急に毛繕いをしなくなったら――
それは体調不良のサインかもしれません。

毛繕いをするには、ある程度の
体力と柔軟性が必要です。

・熱があって体がだるい
・関節や筋肉に痛みがある
・呼吸が苦しくて体を動かしたくない

そんなとき、猫は毛繕いをやめてしまいます。

さらに、お尻まわりや背中、首など、
普段なら届くはずの場所が
ボサボサになっていたら要注意。

「サボっている」のではなく、
「できない状態」にあるのです。

いつもの毛並みと比べてみて、
ツヤがない、汚れが残っている、
そんな違いに気づいたら、
 そっと体調をチェックしてみましょう。


 

サイン② まばたきしない・目力がない

猫はとても表情豊かな動物ですが、
目の動きには特に注目すべきサインがあります。

「目がぱっちり開いている=元気」ではありません。

たとえば、

・まばたきをしない
・目をじっと開いたまま動かさない
・目がどんよりと濁って見える
・目力がなく、焦点が合っていない

こうした状態は、猫が痛みや強い倦怠感を
感じている可能性があります。

また、目を細めている場合は、
まぶしさではなく「痛み」を我慢している
サインかもしれません。

触ろうとすると嫌がったり、
目のまわりを手で隠そうとする仕草も、
注意深く観察したいポイントです。

「目がいつもと違うかも?」と感じたら、
 その日は少し意識的に様子を見てください。


サイン③ 隠れる時間が長い

猫はもともと、狭くて暗い場所が大好き。
でも、いつも以上に「こもりっぱなし」になっていたら、
それは体調不良や不安のサインかもしれません。

特に注意したいのが、
・クローゼットの奥にずっといる
・押し入れやベッド下から出てこない
・おもちゃにも反応しない
などの“極端なこもり行動”。

猫は本来「弱っている姿を隠す」本能を持っています。
体調が悪くなると、安全だと感じる場所に隠れて
じっとしていることで、自分を守ろうとするのです。

いつもは出迎えてくれるのに姿が見えない、
ごはんやトイレ以外でほとんど出てこない――
 そんな変化があれば、見逃さないようにしましょう。


サイン④ 鳴き方が変わる

猫の声には、思っている以上に
たくさんの“気持ち”が込められています。

普段はおとなしい子が、急に
・低くうなるような声を出す
・長く、不安げに鳴き続ける
・短く頻繁に鳴く
などの変化を見せた場合、
何らかの不調やストレスを抱えている可能性があります。

また、逆に「いつもよく鳴く子」が
急に無口になったときも要注意。
痛みや違和感で声を出す余裕が
なくなっているのかもしれません。

飼い主さんが普段から「うちの子の鳴き声」を
よく知っておくことで、微細な変化にも
気づきやすくなります。

猫の鳴き声は、言葉にならないSOS。
 耳を澄ませて受け取ってあげてください。


サイン⑤ 呼吸が速い・浅い

呼吸の異常は、命に関わる不調のサインです。
猫の安静時の呼吸数は、
1分間におよそ30回前後が目安です。

胸やお腹の上下でカウントできますので、
静かなときに数えてみましょう。

・息が浅くて速い
・お腹だけで呼吸している
・肩や首が上下する
・口を開けてハァハァしている

こういった呼吸の異常は、
呼吸器や心臓、熱中症など、
深刻な体調不良が隠れていることがあります。

すぐに原因がわからなくても、
「いつもと違う呼吸のしかた」に気づいたら、
迷わず行動してください。

猫にとって、呼吸は命に直結する大切なサイン。
日頃から観察する習慣をつけておくと安心です。

日々の観察が、いちばんの予防に

猫の異変に気づくのは、
なにも“医療のプロ”である必要はありません。

むしろ、毎日一緒に暮らしている
飼い主さんだからこそ気づける
小さな違和感がたくさんあるのです。

・いつもより目を合わせてこない
・お気に入りの場所にいない
・なでてもゴロゴロ言わない
・触られるのを嫌がる

こんな行動のひとつひとつが、
猫からの「今日は少しつらいかも…」という
小さなサインかもしれません。

猫の体調は、急変することもあります。
「さっきまで元気だったのに」
「朝は普通にしていたのに」――
そんな声は、動物病院でもよく耳にします。

だからこそ、“なんとなくおかしい”を
軽く流さないことが大切です。

いつもと違う鳴き声、
しぐさ、歩き方、呼吸のテンポ…。
そうした些細な変化に気づけるのは、
日頃から猫をよく見て、よく触れて、
よく話しかけている飼い主さんだからこそ。

また、猫の不調サインに早く気づくためには、
「いつもの元気な状態」を知っておくことも重要です。

健康なときの毛並み、
お昼寝時間の長さ、ごはんの量、
呼吸のリズムや目の輝き――

こうした“平常時の当たり前”を
よく理解しておくことで、
「違和感」が際立ちやすくなるのです。

加えて、記録をつけることも有効です。
食欲や排泄、体重、寝ている時間などを
カレンダーやスマホのメモに残しておけば、
「そういえば最近ちょっと変かも…」と
振り返って気づけることもあります。

毎日の“気づき”の積み重ねが、
病気の早期発見につながる――
それは、獣医療の現場でもよくあることです。

そして何より、飼い主さんの「見守り」は、
猫にとっても安心につながります。

じっと見守ってくれている存在がいる。
異変に気づいてくれる人がいる。
それだけで、猫の暮らしはより穏やかで、
 信頼に満ちたものになるのです。


猫は本来、とても我慢強く、
不調を周囲に悟らせない生き物です。
そのため、体や心に異変があっても、
表面的には平気そうに見えることが少なくありません。

だからこそ、飼い主さんが
「なんだか今日は様子が違うな」と
感じるその“ちょっとした違和感”こそが、
とても大切なサインになります。

毛繕いをしなくなったり、
目に力がなかったり、
静かに隠れている時間が増えたり――
そういった行動のひとつひとつが、
猫なりの小さなSOSかもしれません。

日々の観察と、「いつも」との違いに気づく力が、
猫の命と健康を守る大きな助けになります。

愛猫が心地よく、安心して過ごせる毎日のために、
どうかその変化に優しく寄り添い、
そっと見守る時間を大切にしてあげてください。

猫と暮らすということは、
言葉ではなく、仕草や表情、
静かなまなざしを通して
心を通わせていく毎日です。

だからこそ、飼い主さんが感じる
「ちょっとした違和感」は、
とても価値のある“気づき”なのです。

猫たちは、言葉で「つらい」と訴える代わりに、
行動や雰囲気で、そっとサインを送ってきます。
それに気づいてもらえると、
安心したようにそっと目を閉じたり、
静かにそばに寄ってきたりすることもあります。

健康管理のための観察というだけでなく、
“あなたと猫ちゃんとの信頼関係”を築くことにもつながるのが、
この「見守る時間」です。

今日はどんな様子かな?
何か昨日と違うことはあるかな?
そんなふうに気にかけることが、
猫にとってもかけがえのない愛情になるのです。

猫の小さな命が、今日も穏やかに輝いているように――
その願いを込めて、これからも
 あなたの優しいまなざしをそっと注いであげましょう。