猫のフィラリア予防 完全室内飼いでも必要なの?【キャットケアスペシャリストが解説!】

猫のフィラリア予防 完全室内飼いでも必要なの?【キャットケアスペシャリストが解説!】

外に出ない完全室内飼いの猫でも
フィラリア予防が必要なのか?
キャットケアスペシャリストが
そのお悩みにアドバイス!

猫のフィラリア感染症という言葉を
聞いたことはありますか?
5月ごろから飛びはじめる「蚊」
によって媒介される感染症です。

フィラリア感染症は飼育環境の変化から
年々少なくなっているものの、感染例が
ゼロになったわけではありません。

完全室内飼いの猫でも、フィラリア感染症
にかかる可能性があります。
万が一の
ことを考えて、
フィラリア感染症の予防を

することをおすすめします。

■フィラリア感染症とは?

別名「犬糸状虫症」といいます。犬の字
が入っているように犬が感染しやすい
病気ですが、猫にも感染します。

フィラリアに感染した動物の血を
蚊が吸います。その血を吸った蚊に
刺されることで、フィラリア幼虫が
体内へ入り感染します。

ここが誤解されやすいポイントですが、
猫は犬より感染しにくい=安全
というわけではありません。
実際には猫の体内でのフィラリアの動きは
犬より複雑で、症状の出方もバラつきがあり、
ときに「急性発症」「突然死」として
現れることもあります。

猫は体が小さいため、ほんの数匹の虫体でも
大きく体調を崩すことがあります。
たとえ成虫まで育たなかったとしても、
幼虫の移動による炎症反応や肺障害が
起きるケースがあり、軽視できない
感染症なのです。


■猫の感染確率は?

猫の感染率は約10%、10匹に1匹の
確率で現在や過去に感染の経験が
あるとされています。

この「10%」という数字は、猫が犬に比べ
感染しにくいという生態的特徴を反映した
ものです。猫の体内では、フィラリア幼虫が
成虫へと成長しにくいため、見かけ上の
感染率は低く出ます。しかし、これは
“安全”という意味ではありません。

むしろ猫では、
・成虫数が少なくても重篤化しやすい
・症状が非典型(犬と違い咳や元気消失だけなど)
・突然死として発見されることもある
といった特徴があり、臨床的には犬より
予防の重要性が高いともいえます。

また、猫はフィラリア抗原検査(成虫検査)が
陰性になりやすいという課題もあります。
体内に成虫が少ない、または雌成虫が
いないと抗原が検出されないため、
「陰性=絶対安全」ではありません。

そのため獣医療の現場では、

  • 抗原検査(成虫)

  • 抗体検査(幼虫が体に入ったことがあるか)
    両方の検査を組み合わせながら判断する
    必要があります。

さらに、外に出ない猫でも感染例が
一定数報告されており、完全室内飼育が
必ずしも予防になるとはいえません。
近年の都市部では、マンション高層階の
猫がフィラリア陽性と判明するケースも
 あり、蚊の侵入経路は実際には多数存在します。

  1. 呼吸が苦しくなる
  2. 嘔吐する
  3. 食欲がなくなる
  4. 元気がなくなる
  5. 体重が減る

多くの場合、フィラリアの幼虫は成虫に
なる前に、猫の体内で死滅してしまうと
いわれています。幼虫の段階でも猫に
さまざまな症状が出ることがあります。

しかし、フィラリアが成虫になっても
目立った症状もなく普段どおりに生活
できる猫もいます。この成虫が猫の
体内に3〜5年寄生して、死んでしまった
あとが一番危険ともいわれます。

フィラリアの死骸が血管や肺に
詰まってしまい、突然死をまねく
こともあるのです。フィラリアに感染
しても、症状が出なかったり軽度で
済む猫もいます。

しかし、猫によっては症状も重く、
命に関わる状態になることもあります。
感染してフィラリアが成長してしまうと
治療が困難な感染症です。万が一に
備えて予防することは非常に大切です。


■室内飼いでも予防は必要?

蚊の侵入経路があるかぎり、家の中で
暮らす猫でも感染の可能性はあります。
換気のため窓を開けたときに隙間から
侵入したり、人が外出から帰ってきた
ときに服について侵入することが
あります。

また、網戸があるからといっても
安心はできません。

  • 網戸の隙間

  • 網戸の破れ

  • 網戸のレールの小さな開閉部
    これらから蚊が侵入するケースが多く、
    完全遮断はほぼ不可能といえます。

蚊が嫌いで夏の時期は蚊が入ってこない
ように気をつけていても、完全に侵入を
防ぐことはできません。感染してから
後悔しないように、完全室内飼いでも
しっかりフィラリア感染症の予防を
しましょう。


■予防できる薬は?

猫のフィラリア予防薬は、液体を垂らす
スポットタイプが主流になっています。
猫の首のあたり、すこし毛を掻き分けて、
なるべく皮膚に薬が届くようにしながら
垂らします。

猫の負担にもならず簡単に投与する
ことができます。それぞれの薬によって
多少違いがありますが、効果は約1か月
持続します。

シャンプーをしても効果が落ちること
はありませんが、投与してから薬が
からだ全体にまわるまでの間、2〜3日
ぐらいはシャンプーやお風呂は避けた
ほうがいいでしょう。蚊が飛ぶ
5月〜9月に月1回の目安で投与する
ようにしましょう。

スポットタイプのほとんどがフィラリア
の寄生予防だけではなく、ノミ・ダニ、
回虫などの駆除にも効果があります。

検索するといろんな種類の薬を調べる
ことができますが、かかりつけの獣医さん
へ相談して選ぶことがいちばん安全だと思います。

ここにもうひとつ付け加えるなら、
猫は薬に敏感な生き物です。
海外製や個人輸入の医薬品は
成分濃度が強すぎたり、偽物が混在する危険
も知られています。
必ず信頼できる病院で処方してもらいましょう。


まとめ

「うちは蚊が入らないように気をつけて
いるし、外にも出ないから大丈夫」と
思うお気持ちはよく分かります。

しかし、フィラリアは感染しても
症状が出にくく、気づいたときには
重症化してしまっているケースもあります。
とくに猫の場合は治療薬がないため、
「予防しておけばよかった」という
後悔につながりやすい病気です。

フィラリアの恐ろしさは、
“症状の幅が広く、突然死のリスクがある”
という点にもあります。
今日まで元気に過ごしていたのに、
明日突然体調が急変することもあります。

完全室内飼いであっても、

  • 玄関の出入り

  • ベランダの開閉

  • 網戸のわずかな隙間

  • 洗濯物の取り込み時の付着
    など、さまざまなルートで蚊は侵入します。

だからこそ、
「室内飼い=安全」という思い込みは捨て、
月に1回の予防を習慣化することが、
最愛の猫を守るいちばん確実な方法です。

フィラリア予防は特別なことではなく、
猫の健康管理の一部として取り入れれば
難しいものではありません。
月1回、数秒で済むケアで、
重篤な感染症から猫を守ることができます。

備えあれば憂いなし。
後悔する未来をつくらないためにも、
今年のシーズンからぜひ予防を始め、
猫が安心して過ごせる毎日を
守ってあげましょう。

フィラリア感染症は“犬の病気”という
イメージが強く、猫での予防意識はまだ
十分とはいえません。しかし、近年は
地球温暖化による蚊の活動期間の長期化、
都市部でも雨水枡やベランダの植木鉢に
ボウフラが増えるなど、室内飼育の猫でも
感染リスクは確実に存在しています。

さらに猫は、犬のように明確な症状を
出さないケースが多く、「突然死」や
「原因が分からない呼吸器症状」が
後からフィラリアと判明することも
珍しくありません。症状が軽く見える
からといって、決して安心はできない
病気なのです。

予防薬は月に1回、わずか数秒で終わる
シンプルなケアですが、これだけで
命に関わるリスクを大きく下げることが
できます。「万が一」を防ぐための
いちばん確実で優しい方法が“予防”です。

大切な猫が苦しむ姿を見ないために。
そして、飼い主さんが後悔することが
ないように。
完全室内飼いであっても、蚊が1匹でも
侵入する可能性がある環境で暮らして
いる以上、フィラリア予防は“必要な
日常ケア”として考えておくことを
おすすめします。

猫との穏やかな生活を守るために、
今年も忘れずに予防を続けていきましょう。