猫のおしっこの平均的な
回数と、おしっこでわかる
猫の健康状態。
病気の早期発見に繋がる
観察方法をキャットケア
スペシャリストが解説します。
猫のおしっこの平均的な回数は
1日1〜3回といわれています。しかし
猫にも個体差があり、すべての
猫にとって平均の回数がよいともいえません。
大切なのは、その子のいつもの
おしっこの回数を把握することです。
いつもの回数より少ないか多いかを
判断できることで、猫の不調に
早く気づくことができます。
おしっこの色や量からわかることも
あるので、普段から猫のおしっこを
よく観察しておきましょう。

なぜ「いつもの状態」が大切?
猫は体調の変化を隠す生き物です。
そのため、飼い主だけが知っている“いつも通り”の基準はとても重要です。
・普段よりトイレの滞在時間が長い
・砂をかく動作が増えた
・排尿体勢の回数が多いのに出ない
・トイレに行く前に鳴く
このような変化は、早期発見のサインになります。
日頃からトイレを観察する習慣をつけましょう。
おしっこの回数の変化と病気の関係
いつものおしっこの回数や状態の
変化から、いくつかの病気の可能性を考えます。
おしっこの回数が多いとき
■回数が多く、おしっこの量が少ない。または、おしっこが出ないとき
|膀胱炎
細菌に感染して膀胱が炎症をおこし、
尿が溜まっていなくても残尿感
などでおしっこへ行く回数が増えます。
また、血尿や排尿のときに痛みを
伴うこともあります。原因がわからない
突発性の膀胱炎は、ストレスや肥満が
原因といわれています。
|尿石病
尿のミネラル成分が結晶化し、
泌尿器で結石となります。結晶が尿に
混じってキラキラしていたり、排尿の
ときに痛みを伴う場合があります。
重症の場合は尿道で詰まってしまい、
尿が出ないこともあります。
▼補足:この状態が危険な理由
「痛そう」「かわいそう」だけではなく、
命に関わる状態に進行しやすいためです。
特にオス猫は尿道が細いので詰まりやすく、
数日放置すると命を落とす可能性もあります。
尿が出ない、辛そうにうなる、トイレに篭るなどの症状があれば
すぐに病院へ。
■回数が多く、おしっこの量も多いとき
|慢性腎臓病
何らかの原因で腎臓の機能が低下
してしまう病気です。病気の症状として
食欲は減るのに、水を飲む量が増えて
おしっこの回数や量が増える傾向があります。
|糖尿病
人間の糖尿病と同じように、血糖値が
高い状態が続く病気です。
初期症状として、水を飲む量が増える、
ごはんを食べても太らないもしくは
体重が減るなどの症状があります。
尿の量も多くなり、ニオイがあまりしないのが特徴です。
中高齢猫は特に注意
7歳を過ぎると腎臓病のリスクが高まり、
猫の死因の上位にも入ります。
年齢に応じたフード、定期的な血液検査、
飲水量のチェックが予防に役立ちます。
おしっこの回数が少ないとき
■おしっこの回数が極端に少ない。または、おしっこが出ないとき
|尿道閉塞
結石が尿道を塞いで尿を排出
できなくなります。トイレで
おしっこをしようと頑張っても
出ないので、唸るように鳴くことがあります。
|急性腎不全
腎臓の機能が急激に低下してしまう
病気です。尿結石や尿道閉塞、膀胱腫瘍
などが原因でおしっこが出なくなります。
すぐに病院へ
おしっこが出ない=命の危険信号。
様子を見てはいけません。
病院では
・カテーテル処置
・点滴
・鎮痛
など緊急対応が必要です。

おしっこの色やニオイもしっかり観察
おしっこの色
猫の通常のおしっこの色はやや濃い黄色
といわれています。オレンジに近い
濃い色や、血が混じったような茶褐色の
尿は異常です。
鉱物性の砂を使用していると色が分かり
にくいと思います。おしっこを摂って
色を確認できればいいですが、
難しい場合はおしっこの最中に
トイレットペーパーなどを尿にあてる
などして色の確認ができます。
色チャートで観察を
最近は猫用尿色チャートも販売されています。
客観的に色を判断できるツールとして便利です。
おしっこのニオイ
猫のおしっこのニオイは独特です。
苦手な人も多いと思います。ニオイの
変化に気づくことで不調の早期発見に
繋がることもあります。
いつもよりニオイがキツい、または
全くニオイがしないなどの確認をしておきましょう。
ニオイ変化は体のSOS
アンモニア臭が強い→脱水
ツンと酸っぱい→細菌感染
全くしない→糖尿病の可能性
日々のニオイ変化も、病気の早期発見に役立ちます。
おしっこのトラブルを防ぐ
少しでもおしっこのトラブルを防ぐ
ために、私たちが普段からできることは何でしょうか?
1|ストレスを減らす
ストレスが原因でおしっこのトラブル
になることがあります。生活環境を
整えて、猫が快適に暮らせるように
することは大切です。ストレスのない
暮らしは健康に繋がります。
2|ごはんの見直し
ドライフードの中には水分を摂らせる
ために塩分を高めにしているものも
あります。猫が水を飲んでくれた
としても、健康に良いとは思えません。
ほとんどの猫は水分を摂る量が足りて
いないといわれています。
ウェットフードを取り入れたり、水分を
摂らせるような食生活への見直しも一つの対策になります。
3|トイレ環境の改善
トイレの快適な環境は重要です。
汚いトイレでは猫もおしっこをするのを
嫌がります。粗相や膀胱炎の原因にも
なるので、いつも清潔にしておきましょう。
簡単にできる予防習慣
猫のおしっこトラブルを防ぐには、
特別な道具や難しい知識が必要なわけではありません。
毎日の生活の中で、少しだけ意識を変えるだけで
大きな予防になります。
ここでは、すぐに実践できる習慣を
わかりやすく紹介します。
1|毎日トイレをのぞく習慣をつける
「どんなおしっこをしているかな?」
と、トイレを見るだけでも立派なチェックです。
ポイントは
-
砂の固まりの大きさ
-
回数
-
色・ニオイ
-
トイレ中の様子(力んでいないか)
“昨日と違う” に気づけることが一番大切です。
2|水をあちこちに置く
水飲み場は1ヶ所だけだと、
“飲みたいけど面倒”になりがちです。
✓ 食事スペースとは別に
✓ お部屋の複数箇所に
✓ まんまるのお皿、浅い皿、噴水タイプ…と種類を変える
「飲みやすさの選択肢を増やす」ことで
自然と水分量が増えます。
3|ウェットフードやスープを活用
すべてをウェットにする必要はありません。
普段のカリカリに
・少しのウェット
・ぬるま湯をかけて香りを引き立てる
・猫用スープを足す
それだけでも水分補給になります。
特に冬場は冷たい水を嫌がるので、
「常温〜ややぬるめ」がポイントです。
4|トイレは“使いやすさ”を優先
猫はとてもきれい好きです。
汚れたトイレは“行きたくない場所”になります。
-
こまめに砂を取る(1回でも取る)
-
トイレは猫の頭数+1個
-
静かで落ち着ける場所に設置
-
香りの強い洗剤は使わない
人間の都合より、猫の快適さを優先しましょう。
5|季節で水分量は変わる
冬は水を飲まなくなる
夏は汗をかかない分、尿が濃くなる
ので、季節で対策も変えてあげましょう。
冬:あたたかい水を用意
夏:新鮮な水を多めに、ウェット多めに
小さな気配りが、大切な予防になります。
6|気になる日は“メモする”
トイレ記録があると、
「そういえばこの日から少ない」
と変化に気づきやすくなります。
手帳、スマホのメモ、写真でもOKです。
カンタンで続けられる方法を選びましょう。
飼い主さんの少しの習慣が、猫の命を守る
泌尿器トラブルは
早く気づければ防げる病気が多いです。
だからこそ、日々の小さな習慣がとても大切。
難しいことはしなくても、
“ちょっとだけ気にかける” その気持ちが
猫の健康につながります。

まとめ
猫は痛みや不調を我慢してしまう
生き物です。猫たちがおしっこのトラブル
もなく快適に暮らせるように、私たちが
できることをしてあげましょう。
猫たちのいつものおしっこを観察し、
トイレの環境を清潔に保つようにします。
いつもと違う様子に早く気づいて
対応することが重要になります。
とはいえ、毎日完璧に観察しなければ
いけないわけではありません。
大切なのは“いつもと違う変化”に
気づける習慣を持つことです。
トイレの砂の減り方、音、ニオイ、
猫の様子、掃除した際の量。
それらをざっくり把握するだけでも、
早期発見につながります。
病気は症状が表面化したときには
すでに進行していることがあります。
特に泌尿器系のトラブルは
急変・命に関わるケースが多いため、
気になったら迷わず病院へ相談する
行動力もとても大切です。
また、おしっこの異変は環境の変化、
ストレス、季節(寒暖差)によっても
影響を受けます。
水飲み場の見直しや食事の工夫、
静かに過ごせる環境づくりなど、
日々の小さな改善が
猫の心と体を守ってくれます。
猫は言葉を話せませんが、
トイレの中にたくさんの情報を
残してくれています。
その小さなサインを見逃さず、
猫と一緒に安心で穏やかな日々を
過ごせるよう、毎日の観察とケアを
続けていきましょう。


