猫に必要な飲み水の量と飲ませる工夫【キャットケアスペシャリストが解説!】

猫に必要な飲み水の量と飲ませる工夫【キャットケアスペシャリストが解説!】

猫が水を飲んでくれない?
不足しがちな水分、猫に
もっと水を飲んでもらう
ための工夫をキャットケア
スペシャリストがアドバイス!

猫の祖先は砂漠で暮らしていた
ことから、猫は体内の水分を自分で
うまく調節する能力に優れている
といわれています。

そのため、なかなか水を飲んで
くれない現代の猫も多いようです。
泌尿器系の病気になる傾向が
高い猫にとって、水分をしっかり
摂ることは大切です。

自然界で狩りをしていたころとは
違って、私たちと暮らす猫は
ドライフードが主流です。栄養は
しっかり摂れても水分までは十分に
摂ることができません。

猫が必要な水分を摂れるように、
私たちが工夫できることを紹介します。

特に室内飼いの猫は、外で生活する猫のように
獲物から水分を摂ることができません。
野生の猫は獲物の体液から水分の大部分を補っていましたが、
現代の猫は飼い主が作る環境や与える食事に
水分補給が大きく左右されます。

さらに、加齢とともに喉の渇きに気付きにくくなり、
そのために慢性的な脱水状態になることもあります。
猫は体の小さな動物ですから、
ほんの少しの脱水でも体調に影響が出てしまいます。

「飲まないから仕方ない」ではなく、
“飲みたくなる環境づくり”をしてあげることが、
飼い主としての大切なサポートです。


猫に必要な1日の水の量

必要な水の量は体重によって異なります。

猫の体重

必要な水の量

1kg

50ml

3kg

150ml

6kg

300ml

9kg

450ml


必要な水の量は1kgあたり50ml
目安になります。体重が増えるにつれて
必要な水の量も増えていきます。

体重が9㎏の猫が必要な1日の水分量は
ペットボトル1本分にもなります。
猫にとってペットボトル1本分もの
水を飲むことは大変なことです。

ウェットフードを取り入れて食事でも
水分が摂れるように工夫してみましょう。

ただし、猫によって飲水量は変わります。
活発な猫、シニアの猫、持病がある猫では必要量も異なります。

また、季節によっても必要な水分は変動します。
夏は熱中症予防のために、
冬は乾燥による脱水対策が必要です。

飲水量を把握するには、
・1日の終わりに容器の水量を確認
・複数頭の場合、飲む様子を観察
など、習慣的に記録していくことが役立ちます。

飲水量が急に減る、または急に増える場合、
体調の変化が隠れていることもありますので、
小さな変化でも見逃さずに様子を見ましょう。

水分不足が原因になる病気

猫は泌尿器系の病気にかかりやすい
傾向にあります。そこに水分不足
重なるとさらに病気にかかる
リスクが上がってしまいます。

 

1|尿路結石

尿のミネラル分が結晶化して、
結石になり尿道を傷つけたりします。
排尿のときに痛みを伴うことも
あります。最悪の場合、結石が
尿道を塞いで尿が出なくなることも。

 

2|膀胱炎

細菌が入って膀胱が炎症を
おこしてしまうのが単純膀胱炎です。
細菌の感染もなく原因がわからない
膀胱炎を突発性膀胱炎といい、
猫はこのケースが多いとされています。

ストレスや寒さでおしっこを我慢する
ことが多くなると膀胱炎をおこし
やすくなります。

 

3|慢性腎臓病

腎臓は老廃物をおしっこと一緒に
排出する役割があります。水分が
足りないとおしっこも少なく
老廃物も排出されにくくなります

老廃物が溜まると腎臓に負担がかかり、
機能が低下してしまい腎臓病になって
しまいます。


水分を摂ることは、ごはんを食べること
と同じくらい重要になります。
水分をしっかり摂ることで病気の
予防にもなります。

特に、雄猫は尿道が細く詰まりやすい構造のため、
尿トラブルのリスクが高いと言われています。

一度尿道閉塞を起こすと、
命に関わる緊急事態になることもあるため、
普段から水分補給に気を配ることが大切です。

また、腎臓は一度機能が低下すると元に戻せません。
だからこそ、“予防”が何より重要です。

水分摂取は、猫の長寿に直結する習慣。
毎日の積み重ねで、猫の未来を守りましょう。


水を飲ませるアイデア

水をあまり飲まない猫たち、どう工夫したらもっと飲んでもらえるようになるでしょうか?

1|流れる水を設置

猫は流れている水は新鮮という認識を
持っているようです。モーターで水を
循環させ、常に流れているような
猫の水飲み器の設置も効果的です。

流れる水に興味を持ち、水を飲む量が
増えるかもしれません。お手入れは少し
手間になりますが、面倒くさがらず
こまめに掃除するようにしましょう。

 

2|置き水の場所を増やす

置き水の場所を増やすだけでも効果は
十分にあると思います。ごはんの横に
水を置いていることが多いと思いますが、
テーブルや棚の上、部屋の入り口など
猫の通る道の途中に複数水を
置いておきます。

猫が通る途中で水を飲む回数を増やす
ためです。水を蹴ってこぼしてしまう
ことのない場所を選びましょう。
なるべく新鮮な水を保つために、
水はこまめに入れ替えます。

 

3|置き水の容器

猫の水飲み用のボウルは置いてある
のに、人が飲もうとグラスに入れた
水のほうを好んで飲んだりすることが
あります。

同じ水なのに、容器が違うだけで水を
飲んでくれることもあります。
猫用のものを買わなくても大丈夫です。
家にあるグラスに水を入れて
置いてみましょう。

そのほかにも、

  • 水にほんの少しだけかつおだしを足す

  • ウェットフードにぬるま湯を加える

  • 氷を入れて遊び感覚で飲ませる

  • 好きな高さの器を探す(床・台・棚上)

など、猫に“水を楽しんでもらう”工夫が効果的です。

ただし、味付き水は香り程度に。
塩分や添加物は避けましょう。

「飲まない」ではなく
「どうすれば飲んでくれるかな?」という視点で、
その子に合う方法を一緒に探してあげてください。

まとめ

猫が水を飲んでくれない、水を飲む量が
少ないと悩む人も多いと思います。
猫がしっかり水を飲んでくれたら、
病気の予防や健康にも繋がります。

水を飲む場所を増やしたり、容器を
変えるだけでも効果はあると思います。
簡単にできることからはじめてみましょう。

「どうしてうちの子はこんなに水を飲まないの?」
そんなふうに、心配になってしまう飼い主さんもいるでしょう。
ですが、まず大切なのは、焦らずに
猫のペースに寄り添いながら工夫していくことです。

猫は急激な変化を好みません。
一度に多くのことを試すよりも、
小さなステップで環境を整えていくほうが
結果的にうまくいくことが多いです。

「昨日より、今日少しだけ飲んでくれた」
そんな小さな前進が、猫の体を守ってくれます。

また、水を飲むという行為は、
飼い主と猫の信頼関係にも影響します。
無理に飲ませようとすると逆効果になり、
警戒してしまう場合もあります。

だからこそ、飼い主が “選択肢を用意してあげる” こと、
それが猫にとってストレスのない水分補給につながります。

高さの違う器、素材の違う器、
流れる水、ぬるま湯、氷、ウェットフード。
方法はいくつもあります。

そして、どんなに工夫してもうまくいかない場合、
動物病院で相談してみてください。
慢性的に水を飲まない背景に、
腎臓の問題や口の痛みが隠れていることもあります。

“飲まない=性格” と決めつけてしまう前に、
健康チェックという視点を持つことも大切です。

猫は話せないからこそ、
日々の観察と小さな気づきが、
その子の未来を守る行動になります。

水を飲むことは、毎日の積み重ね。
長く、健やかに過ごしてもらうために、
今日から少しずつ、水分と向き合う習慣をつけていきましょう。

そして何より、どんな工夫にも
「うちの子のためにできることを探す時間」は、
猫との暮らしを豊かにしてくれるはずです。
その優しい気持ちが、猫にとって何よりの幸せです。